このコーナーでは他にない付加価値を生み出している経営者を客単価UPコンサルタント・村松達夫の視点で考察し、経営を飛躍させるためのエッセンスを抽出していきます。さらっと読むだけでワクワクとした高揚感が得られ、今の時代を切り開くビジネスのヒントが手に入ります。
ファンが増殖し続ける歯医者さん
今回、ご紹介するのは、京都・山科にある歯科医院さんだ。
この医院では毎年患者さんが増殖し続けている。
とはいうものの女性の院長ということ以外、特筆することがないくらいごくごく普通の歯科医院だ。
正直どこにでもありそうな医院と言ってよいだろう。
それにも関わらず、来院した患者さんがどういう訳か、次から次へとファンになっていくのだ。
今回はその秘密に迫ってみたい。
-1- 自己開示
最初に述べたように、ごく普通の歯科医院だが、1つだけ特徴的なことを挙げるとしたら、ある「アイテム」を患者さんに送っていることだろう。
-2- 無理をさせない
次に挙げたいのは、松井院長の特徴は無理をさせない、というスタンスだ。
-3- 聴き続ける
ニュースレターや歯ブラシからも松井院長のファンが増える理由を感じて頂けたと思うが、松井院長の本質はそこではない。
-1-自己開示
最初に述べたように、ごく普通の歯科医院だが、1つだけ特徴的なことを挙げるとしたら、ある「アイテム」を患者さんに送っていることだろう。
そのアイテムとは、「ニュースレター」である。
ニュースレターが何か分からない人のためにカンタンに解説をすると、「〇〇通信」「〇〇情報」といったように、顧客に送付する紙媒体のことだ。
まつい歯科クリニックでは、「ぽむぽむ通信」という名のニュースレターを来院した患者さん全員に送付しているのだ。
実はこれが圧倒的なファンを作り、リピート率を飛躍的に上げ、口コミを拡散させている究極のツールなのである。
まつい歯科クリニックでは、このニュースレターをかれこれ10年以上も送っているため、患者さんがどんどんリピートし、ファンになり、口コミされているのだ。
このように書くと「さぞすごい内容なのだろう」と読者は思うかもしれない。
しかし、事実は全く異なる。
A4の紙1枚のみで、絵や写真も使っているため、文字数もそんなに多くはない。
ところが、このニュースレターを読んだ患者さんは次から次へと松井院長のファンになっていくのだ。
いったい何が書いてあるのか?それは、一言で言えば、「松井院長の人となり」だ。
とかく歯医者さんというのは、高学歴のためか、尊敬はされるものの、近寄りがたい、といったマイナスの面がある。
そこで、松井院長はこのニュースレターでご自身の「人となり」をオープンにしたのだ。
分かりやすい例を1つ挙げるならば、松井院長は、彦根のゆるキャラ=ひこにゃんが大好きで、毎月のように会いに行くくらいの超コアなファンなのだ。
そのことをニュースレターに毎月のように書いていったところ、ひこにゃん=松井院長、というイメージが定着し、親しみやすさが増したため、他の医院とは比べ物にならないくらいの親近感を勝ち取ることに成功したのだ。
自分のことを包み隠さず話せ!
今の消費者は広告を信用しない。
いくらでも都合の良いことを並べ立てられることを知っているからである。
そんな時代に有効なのは経営者の人となりをいろんな角度でオープンにしていくことである。
そこから感じ取れる人間性には嘘はつけないため、信頼を勝ち取ることができるのだ。
-2-無理をさせない
次 に 挙げたいのは、松井院長の特徴は無理をさせない、というスタンスだ。
私の偏見かもしれないが、多くの歯科医院には、「あなた自身の歯なんだから、難しいことでも何とか頑張りなさい」といったムードを感じることが少なからずある。
だが、松井院長にはそれが全くない。
そのことを顕著に示しているのが、松井院長推薦の歯ブラシだ。
読者も経験あると思うが、歯医者さんに行くとブラッシング指導を受けることがある。
しかし歯ブラシを駆使して、全ての歯をキレイに磨ける人は少数派だろう。
実際、松井院長ご自身もブラッシング指導どおりに磨くのは無理だ、ということを素直に認め、「努力しなくても磨ける歯ブラシ」を探し続けた。
その結果、ブラッシング技術が乏しくてもキレイに磨ける歯ブラシを見つけたのだ。
そして、ブラッシング指導は行うものの、同時にその歯ブラシを患者さんに勧めているのだ。
しかも、「歯医者の私が上手く磨けなかった経験から、楽に磨ける歯ブラシを探したのですよ」と通常の歯科医であれば隠したくなるようなホンネの話をサラリと語る。
そのことにより、患者さんはますます松井院長を信頼するようになっていくわけだ。
ちなみに、その歯ブラシだが、高価なものを売りつけようというわけではない。
1本あたり数百円で買えるものだ。無理させたくない、という院長の想いが込められているのだ。
お客の負担を取り除け!
私たちはつい「これはこういうものなんです」という説明でお客さんの要望を軽視してしまいがちだ。
「できない」といってお客さんに労力をかけてもらうのはカンタンだが、少しでも楽になることを考えてあげたり、提案したりすることで、信頼を勝ち取ることができるのだ。
-3-聴き続ける
ニュースレターや歯ブラシからも松井院長のファンが増える理由を感じて頂けたと思うが、松井院長の本質はそこではない。
実は患者さんの愚痴や不満を徹底的に聴く姿勢にあるのだ。
今の時代、インフォームドコンセントだの、コーチングだの、さまざまなアプローチ法が出ているが、これらはあくまで手法に過ぎない。
大切なのは、「相手のことをもっと知ろう」「相手のことをもっと理解しよう」というマインドである。
松井院長はこれを無理にやっているわけではなく、幼いころからの経験から、「相手の話を良く聞かないと本当のことが分からない」ということを良く知っており、本当に患者さん一人一人の話を聞くのが大好きなのだ。
コーチングやインフォームドコンセントといった技術やマニュアルで話を聞いてもらうのと、本当に興味を持って聞いてもらうのとでは、満足度が違う。
だから、来院した患者さんは他の医院では味わえなかったような人と人との触れ合いを感じて、他の医院にいけなくなってしまうのだ。
実際、来院した患者さんの中には、「医院に一歩入った途端、症状が軽くなった気がする」という方がかなりいる。
もちろん、実際に虫歯や歯周病が治るわけではないが、気持ち的に安心できる空気が院内に漂っているのを肌で感じるのだろう。
お客さんに心から興味を持て!
お客さんが商品やサービスを買う本質的な理由は、「悩みを解決したい」である。
だから、その悩みを解決してくれそうな人のところで商品やサービスを購入するのだ。
そのため、お客さんの悩みを心から聞いてあげさえすれば自動的に商品やサービスは売れていくのだ。
「人と人とのつながりを大切にせよ!」
Lesson1.自分のことを包み隠さず話せ!
Lesson2.お客さんの負担を取り除け!
Lesson3.お客さんに心から興味を持て!
ファンが増殖し続ける歯医者さん